パズルやDIYのように、形を考えながらものを仕上げることが好きな方におすすめなのが、船の防熱・断熱工です。
防熱・断熱工は、船内の配管や機械設備だけでなく、船体の外壁や居住区の内壁などに断熱材・防熱材を施工し、安全で快適な船内環境をつくる専門職です。
ただ材料を取り付けるだけではありません。場所によって異なる温度や外部環境を考え、どの種類の材料を、どのくらいの厚さで、どのように施工するかを計画することも大切な仕事です。
未経験からでも採寸・加工・施工などの専門技術を身につけることができ、経験を積めば班長や施工管理などへのキャリアアップも目指せます。
今回は、防熱・断熱工の仕事内容や働く魅力、身につく資格、将来のキャリアについてご紹介します。
防熱・断熱工とは?
防熱・断熱工は、船内のさまざまな場所へ断熱材や防熱材を施工する仕事です。
施工する場所は配管や機械設備だけではありません。
- エンジンやボイラー周辺
- 高温・低温になる配管
- タンク
- 船体の外壁
- 居住区などの内壁
- 天井
- 空調設備周辺
など、船内の幅広い場所が対象になります。
海上では、強い日差しや外気温の変化、海水による冷えなど、陸上とは異なる厳しい環境にさらされます。
そのため防熱・断熱工は、船内の場所や用途に合わせて適切な断熱を行い、
- 熱から人を守る
- 冷気や暖気を逃がさない
- 結露を防ぐ
- 船内を快適な温度に保つ
- エネルギー効率を高める
といった役割を担っています。
防熱・断熱工は「施工するだけ」の仕事ではない
防熱・断熱というと、「断熱材を取り付ける仕事」をイメージするかもしれません。
しかし、実際には施工前の計画も非常に重要です。
同じ船内でも、エンジン周辺と居住区では必要な断熱性能が異なります。
そのため、
- どの場所に施工するか
- どの種類の断熱材を使用するか
- どのくらいの厚さにするか
- どのように固定・仕上げるか
などを図面や仕様に基づいて確認しながら作業を進めます。
経験を積むにつれて、施工だけでなく材料選定や施工方法についての知識も身につき、より専門性の高い仕事を任されるようになります。
防熱・断熱工の仕事内容

① 図面・仕様を確認する
最初に施工図や仕様書を確認します。
施工する場所や材料の種類、必要な厚みなどを把握し、作業方法を確認します。
② 採寸する
配管や機器、壁面などの大きさや形状を測定します。
船内には曲線や複雑な形の設備も多いため、正確な採寸が重要です。
③ 断熱材を加工する
採寸した寸法に合わせて、断熱材を切断・加工します。
設備によって形が異なるため、一つひとつ形を考えながら加工していきます。
④ 断熱材を施工する
加工した断熱材を、配管・設備・壁・天井などへ取り付けます。
隙間ができないよう丁寧に施工することで、断熱材本来の性能を発揮できます。
⑤ 仕上げ・点検を行う
施工後は、
- 隙間がないか
- 固定されているか
- 指定された厚さになっているか
- 仕上がりに問題がないか
などを確認します。
見た目の美しさだけでなく、性能を確保することが大切です。
パズルを組み立てるような面白さ
防熱・断熱工の特徴の一つが、設備の形に合わせて材料を加工し、ぴったり納めていくことです。
配管や機器は直線だけではなく、曲がっていたり、複数の設備が入り組んでいたりします。
形を確認し、採寸して、材料を加工し、隙間なく施工する。
その工程には、パズルのピースを一つずつ合わせて完成させるような面白さがあります。
DIYや工作、細かなものづくりが好きな方にとって、技術を磨く楽しさを感じやすい仕事です
防熱・断熱工として働く魅力
専門技術が身につく
仕事を通じて、
- 図面を読む力
- 採寸技術
- 材料加工
- 断熱材の知識
- 施工技術
などを身につけられます。
経験を重ねるほど複雑な施工にも対応できるようになり、専門技術者として成長できます。
幅広い知識が身につく
施工する場所によって使用する材料や必要な性能が異なるため、断熱だけでなく、配管・設備・船体構造についても自然と理解が深まります。
将来的に施工管理などへ進む際にも役立つ知識です。
班長・施工管理へのキャリアアップ
現場経験を積んだ後は、
未経験 → 防熱・断熱工 → 班長・職長 → 施工管理
といったキャリアを目指すこともできます。
施工技術だけでなく、工程管理や材料管理、人員配置などを担当する立場へステップアップできるのも魅力です。
昔使われていたアスベストは現在どうなっている?
防熱・断熱材について調べると、「アスベスト(石綿)」という言葉を目にすることがあります。
アスベストは耐熱性や断熱性に優れていたため、かつては断熱材や保温材など幅広い用途に使用されていました。しかし、微細な繊維を吸い込むことで健康被害を引き起こすことが分かり、現在、日本では石綿を0.1%を超えて含有する製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が全面的に禁止されています。
厚生労働省
そのため、現在の新しい船の防熱・断熱施工でアスベストを使用することはありません。
一方、過去に建造された船の改修などでは、既存材料に石綿が含まれている可能性があります。その場合、鋼製船舶を含む解体・改修工事では事前調査や必要なばく露防止措置が定められており、2023年10月以降は船舶の事前調査・分析調査を一定の要件を満たす者が行うことも義務づけられています。
厚生労働省
昔と比べ、現在は材料や作業方法、安全管理に関するルールが整備され、適切な管理のもとで施工が行われています。
身につく資格
多くの企業では、仕事に必要な資格を入社後に取得できるよう資格取得支援制度を設けています。
防熱・断熱工として役立つ資格・講習には、
- 玉掛け技能講習
- 高所作業車運転技能講習
- フォークリフト運転技能講習
- 床上操作式クレーン運転技能講習
- 足場の組立て等特別教育
- 有機溶剤作業主任者技能講習(作業内容による)
などがあります。
未経験で入社しても、働きながら資格や専門技術を増やしていけることが大きなメリットです。
給与・キャリアアップ
防熱・断熱工は、経験や技術が評価につながりやすい専門職です。
目安としては、
- 未経験:年収300~400万円程度
- 経験者:年収400~550万円程度
- 班長・職長クラス:年収600万円以上を目指せる企業もあります
※給与は勤務先、勤務地、経験、資格、勤務形態などによって異なります。
経験を積むことで、班長・職長のほか、施工計画や工程を管理する施工管理などへキャリアを広げることもできます。
未経験からでも挑戦できる?
もちろん可能です。
未経験者を採用している企業では、入社後のOJTを通じて、
- 工具の使い方
- 採寸方法
- 材料の切り方
- 取り付け方
- 図面の見方
などを一つずつ学んでいきます。
最初から断熱材や船について詳しい必要はありません。
現場で経験を積みながら、少しずつできる作業を増やし、専門技術者へ成長していける仕事です。
防熱・断熱工に向いている人
次のような方は、防熱・断熱工の仕事を楽しみながら技術を身につけやすいでしょう。
- パズルやDIYが好き
- 工作やものづくりが好き
- 細かな作業が得意
- 寸法を測ったり形を考えたりするのが好き
- 手に職をつけたい
- コツコツ技術を磨きたい
- チームで仕事をするのが好き
特別な経験よりも、**「つくることが好き」「技術を身につけたい」**という気持ちが大切です。
まとめ|防熱・断熱工は「考えて、加工して、仕上げる」専門職
船の防熱・断熱工は、配管や機械設備だけでなく、船体の外壁や居住区の内壁など、船内のさまざまな場所を熱や冷気から守る専門職です。
施工する場所に合わせて材料の種類や厚さを確認し、採寸・加工・施工まで行うため、経験を積むほど高い専門性が身につきます。
また、現在はアスベストの新規使用は禁止され、既存船の改修時にも事前調査やばく露防止などのルールが整備されています。厚生労働省
未経験から技術や資格を身につけ、将来は班長・職長、施工管理などへキャリアアップすることも可能です。
パズルやDIYが好きな方、形を考えながらものをつくることが好きな方にとって、防熱・断熱工は「好き」を専門技術につなげられる仕事の一つです。


