曳船職(ひきふね職・タグボート乗組員)とは?巨大な船の入出港を支える仕事内容や資格、キャリアを解説

曳船職(ひきふね職・タグボート乗組員)とは?巨大な船の入出港を支える仕事内容や資格、キャリアを解説 曳船職(ひきふね職)
曳船職(ひきふね職・タグボート乗組員)とは?巨大な船の入出港を支える仕事内容や資格、キャリアを解説

小さな船の力で、全長数百メートルにもなる巨大な船を動かす。
そんなダイナミックな仕事を担うのが、曳船職(ひきふね職・タグボート乗組員)です。
港に出入りする大型コンテナ船やタンカーなどは、船体が大きく、狭い場所では自由に方向を変えたり、すぐに停止したりすることが難しい場合があります。
そこで活躍するのが、強力な推進装置を備えた小型船「タグボート」です。
タグボートは、大型船の船体を押したり、ロープで引いたりしながら、安全な入出港や離着岸を支えます。
特に東京湾など、多くの船が行き交う港湾では、大型船の船長や水先人と連携し、限られたスペースで正確に船を動かす高度な技術が求められます。
また、新しく建造された船が造船所から出港するときや、試運転に向かう際にも、タグボートが活躍する場合があります。
「船を操縦する仕事がしたい」「大きな船を動かす仕事に関わりたい」「専門技術を身につけて長く働きたい」
そんな方にとって、曳船職は魅力的な選択肢の一つです。
今回は、曳船職の仕事内容や必要な資格、未経験から目指す方法、キャリアアップについてご紹介します。

曳船職とは?

曳船職とは、主にタグボートに乗り組み、大型船の移動や入出港を支援する仕事です。
「曳船(ひきふね)」とは、ほかの船を引いたり押したりする船のことで、一般的にはタグボートと呼ばれます。
タグボートは、大型船と比べると船体は小さいものの、強力な推進力と高い操縦性能を備えています。
大型船の側面を押して船の向きを調整したり、ロープを使って引っ張ったりすることで、安全な操船を支えます。
タグボートには、船を操る船長や航海士、エンジンや機器を管理する機関士、甲板作業を行う乗組員などが乗り組みます。
つまり、曳船職は一つの作業だけを指すのではなく、タグボートを安全に運航するための複数の専門職を含む仕事です。

曳船職の具体的な仕事内容

① 大型船の入出港・離着岸を支援する
タグボートの代表的な仕事は、大型船が港に入るときや出港するときの操船支援です。
大型船は、速度が遅くなると舵の効きが弱くなることがあります。
そのため、タグボートが船体を押したり、ロープで引いたりして、船の向きや位置を細かく調整します。
例えば、巨大なコンテナ船を岸壁へ近づける際には、複数のタグボートが船首や船尾に配置されることもあります。
小さなタグボートが力を合わせ、巨大な船を少しずつ正確に動かす。 まさに曳船職ならではの技術です。

② 水先人や船長と連携する
タグボートの操船では、大型船の船長や水先人との連携が欠かせません。
水先人が乗船している場合は、水先人から無線で伝えられる指示を受け、タグボートを操作します。

例えば、

  • 船首を右方向へ押す
  • 船尾を引いて船の向きを変える
  • 船体の横移動を補助する
  • 船の動きを抑えて着岸を支援する

といった動きを、状況に合わせて正確に行います。
タグボートの乗組員は、大型船との距離やロープの状態なども確認しながら、安全に作業を進めます。
水先人が大型船を導き、タグボートが実際の力でその操船を支える。
両者は、港の安全を守るために密接に連携しています。

③ 新造船の進水・試運転・移動を支える
タグボートは、造船所でも活躍します。
例えば、新しく建造された船が進水した後の移動や、造船所から試運転海域へ向かう際の離岸・出港などで、タグボートが使われる場合があります。
また、修理する船をドックへ入れたり、修理後にドックから出したりする「入出渠(にゅうしゅっきょ)」作業にも関わります。
船体が完成していても、狭い造船所内や岸壁付近では自由に動かせない場合があります。
そこで、タグボートの力を使って船を安全に移動させます。
造船所でつくられた船が海へ出る瞬間を支えられることも、この仕事の魅力です。

④ 作業船や動力のない船を移動させる
タグボートは、大型貨物船の入出港だけでなく、さまざまな船舶や海上設備の移動にも使われます。
例えば、台船やクレーン船など、自力で移動できない船や設備を引いて運ぶ仕事です。
港湾工事や海洋土木工事など、海のインフラを支える分野でも活躍しています。

⑤ 船の点検・整備・安全管理
タグボートの乗組員は、操船作業だけを行うわけではありません。
作業の合間には、エンジンや推進装置、ロープ、甲板設備などの点検・整備を行います。
また、船内の安全確認や清掃、次の作業に向けた準備なども大切な仕事です。
タグボートは強い力を発揮する船だからこそ、日頃の整備と安全管理が欠かせません。

曳船職にはどんな役割がある?

タグボートには、船長、機関士、甲板員など、さまざまな役割の乗組員がいます。

役割主な仕事内容
船長タグボートの操船、作業全体の判断、安全管理
航海士航海当直や操船補助、運航・安全管理など
機関長・機関士エンジンや推進装置の運転、点検・整備
甲板員ロープの取り扱い、係船作業、見張り、甲板設備の管理

実際の乗組員構成や担当業務は、船の大きさや会社によって異なります。
特に港内で活躍するタグボートは、比較的少人数で運航されることが多く、一人ひとりの役割が重要です。
そのため、乗組員同士の連携とチームワークが安全な作業を支えています

曳船職の仕事の魅力

小さな船で巨大な船を動かす達成感
タグボートは、大型船と比べると非常に小さな船です。
しかし、強力なエンジンと高い操縦性能を活かし、巨大な船を動かす重要な役割を担っています。
特に、大型船が無事に岸壁へ着岸したときには、自分たちの技術が船の安全な運航に役立ったことを実感できます。

高度な操船技術が身につく
タグボートは、一般的な船とは異なる独特の操縦性能を持っています。
船の向きを細かく変えたり、横方向へ移動したり、大型船の動きに合わせて正確に位置を調整したりする必要があります。
そのため、経験を積むことで、タグボートならではの専門的な操船技術を磨くことができます。

港の物流と安全を支えられる
日本の港には、食料やエネルギー、工業製品などを運ぶ多くの船が出入りしています。
タグボートは、そうした船の入出港を支えることで、港の安全と物流を守っています。
普段はあまり目立たない仕事かもしれませんが、巨大な船を安全に港へ迎え入れ、送り出すために欠かせない存在です。

曳船職になるには?必要な資格と取得方法

タグボートで働く場合、担当する役職によって必要な資格が異なります。
船長や航海士、機関長、機関士などの船舶職員として乗り組むには、船の大きさや航行区域、機関の出力などに応じた海技士免許が必要です。

主な資格

資格関わる仕事
海技士(航海)船長・航海士など、船の操船や運航
海技士(機関)機関長・機関士など、エンジンや機器の管理
海上特殊無線技士など担当する無線設備の操作に応じて必要になる資格

海技士(航海・機関)には1級から6級までの等級があり、必要な免許は船舶や役職によって異なります。
例えば、タグボート会社の求人には4級海技士以上を応募条件とするものもあります。すべてのタグボートで同じ資格が必要というわけではありません。

未経験からでも曳船職を目指せる?
曳船職は、未経験から挑戦できる可能性がある仕事です。
例えば、会社によっては甲板員や機関員として働きながら、乗船経験を積み、海技士免許の取得を目指す道があります。
また、船員経験がない方を対象とした6級海技士の短期養成課程もあります。
ただし、タグボートは少人数で高度な作業を行うため、採用時から海技士免許や乗船経験を求める会社もあります。
未経験者を受け入れているか、資格取得支援があるかは、求人情報で確認することが大切です。

曳船職に向いている人

曳船職は、次のような方に向いている仕事です。

  • 船や海が好きで、操船に興味がある
  • 大型船を動かすダイナミックな仕事がしたい
  • 機械やエンジンの仕組みに興味がある
  • チームで協力して仕事を進めるのが好き
  • 状況に応じて冷静に判断できる
  • 安全確認を丁寧に行える
  • 専門資格を取得してキャリアアップしたい

特に、「船を操る技術を身につけたい」「大きな船を動かす仕事に関わりたい」という方にとって、曳船職は魅力的な職業でしょう。

曳船職の働き方は?

曳船職の働き方は、タグボートの種類や会社によって異なります。
港内で大型船の入出港を支援するハーバータグでは、港を拠点として勤務することが多く、日帰り勤務が中心の会社もあります。
一方、遠方への曳航作業などを行うタグボートでは、一定期間船に乗り組む働き方もあります。
また、大型船の入出港は早朝や夜間に行われることもあるため、勤務時間が不規則になる場合があります。
就職先を選ぶ際には、勤務地や乗船期間、休暇、勤務体制、資格取得支援などを確認するとよいでしょう。

曳船職から広がるキャリア

曳船職は、経験と資格を積み重ねることで、専門性の高い役職を目指せます。
<キャリアアップの一例>

曳船職のキャリアアップの一例
曳船職のキャリアアップの一例

実際の昇進には必要な海技士免許、乗船履歴、経験などの条件があります。
タグボートの船長には、操船技術だけでなく、水先人や大型船の船長との連携、安全管理、乗組員への指示など、幅広い能力が求められます。
また、機関長は強力なエンジンや推進装置を管理する重要な役割を担います。
経験を重ねながら技術を磨き、船長や機関長という専門職を目指せることも、曳船職の魅力です。

まとめ|曳船職は小さな船で巨大な船を動かす仕事

曳船職は、タグボートに乗り組み、大型船の入出港や離着岸、造船所での船の移動などを支える仕事です。
タグボートは大型船よりも小さな船ですが、強力な推進力と高い操縦性能を活かし、巨大な船を安全に動かす重要な役割を担っています。
また、水先人や大型船の船長と連携しながら作業を進めるため、高度な操船技術とチームワークが求められます。
未経験から甲板員や機関員として経験を積める場合もあり、資格取得によって船長や機関長を目指す道もあります。
小さな船の大きな力で、巨大な船を動かす。
そんなダイナミックな仕事に興味がある方は、曳船職という職業にもぜひ注目してみてください。

あわせて読みたい|造船の仕事をもっと知る

関連記事誘導文
👉水先人(パイロット)とは?タグボートと連携して大型船を安全に導く、水先人の仕事はこちら
👉航海士とは?船の運航や操船を担当する航海士の仕事を詳しく紹介
👉一隻の船ができるまでタグボートも活躍する、船づくりの工程はこちら
👉船の設計とは?巨大な船を形にする設計の仕事はこちら 

参考|

参照:日本郵船「タグボート —小さな船の大きなちから!」

タグボート —小さな船の大きなちから! 日本郵船これくしょん#1 | BVTL Magazine | 日本郵船株式会社
“Bringing value to life.”──海を越えて価値を届ける。日本郵船の企業理念を体現するさまざまな船が、今日も大海原を行き交います。「日本郵船これくしょん」では、人々の暮らしと経済を支える船種を、詳しく分かりやすくご紹介し…

参照:日本水先人会連合会「水先人の仕事」

日本水先人会連合会
水先人は、船長の助言者という立場で船舶の操縦を指揮して船や港の安全を守る仕事をしています。日本水先人会連合会は水先人の高い信頼性を有する水先業務を構築していくための諸事業を推進しています。

参照:日立埠頭株式会社「曳船業/内航海運業」

https://www.hitachi-futo.co.jp/tug

参照:国土交通省「大型船舶に乗り組むためには(海技士免許)」

海事:大型船舶に乗り組むためには(海技士免許) – 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

参照:株式会社シーゲートコーポレーション「仕事紹介」

仕事紹介|株式会社シーゲートコーポレーション
株式会社シーゲートコーポレーションでの仕事について紹介します。「陸上職員」「技能職員」「海上職員」と3つの職員ごとに業務内容や役割を詳しく掲載しています。
タイトルとURLをコピーしました